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山に思う

MAY 10 , 2020

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近年、増えすぎた野生の鹿による農業、森林被害が深刻化し、国ではニホンジカを害獣として駆除対象に指定しました。

その背景には地球温暖化による環境の変化、天敵であったニホンオオカミの絶滅、過疎化が生む耕作放棄地の増加など様々な問題が複雑に絡み合っていると。

観光客をもてなすマスコットとして愛される存在の一方でどんな実情があるのか、

我々は2017年の2月、京都府南丹市美山にて猟師さんの案内のもと狩猟体験に同行したのです。

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膝丈まで雪が積もる山林を登って行くなか、樹皮が剥がれ立ち枯れた木を目にしました。

これも野生の鹿によって食べられたあとだそうで

一冬で山の姿を変えてしまうほどその勢力は凄まじいものだと言えます。

この樹皮を剥がす食害は鹿にとって雪降る季節の食糧難を示しているのかもしれません。

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20代の女性猟師の姿もありました。

彼らの水飲み場になっている沢で待ち構えていると獲物を嗅ぎつけた猟犬たちは吐く息を白くさせ、一直線に飛び出す。

雪が音を吸い、沢の音だけが聞こえるその場を一層張り詰めた空気にしていました。

パン!と銃声が響き、猟犬が川下へと追い込んだ雄鹿は川で待ち構えていた猟師によって一発で仕留められたのです。痛みを与え続ける事になる半矢(急所を外すこと)は御法度なんだとか。

総出で引き上げますがその体にはまだ熱く体温が残っていました。素早くナイフで血抜きを行う、そうすることで肉の質は保たれ味にも影響するそう。

そうか、これから我々が食べるお肉になるんだ。

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脚から吊るし皮を剥いでいくのですが、これが結構な力仕事。皮を裂かないように、身体にも傷をつけないように。

部位に分けられ捌かれた肉を見ると、お肉屋さんで並ぶ塊肉のそれと同じ様相なのです。調理して食べることまでがこの体験の全てで、カツレツとローストになった鹿肉は絶品でした。美味しいと頂いたことこそが最大の感謝と供養なのかもしれません。

解体後、皮は塩漬けされタンナー(革鞣し工場)へと送られます。牛革、豚革、山羊革…どの動物においても言えることは皮は食肉加工によってうまれる副産物であること。身を置いて改めて感じたのです。

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かつてはこの狩猟も山との暮らしをする上で当たり前に生活に含まれていたそうですが、猟師の減少、その先の担い手になる次世代が都市の生活に移る今、大昔から続く自然と人とのバランスが崩れつつあるそうです。捕獲され駆除されるだけを見過ごせずにはいられません。

美味しく食し、皮や角を生活の道具に活用していくことそれは

先人たちが拓いた自然との共存のあり方、あたりまえを受け継いでいくということだと思っています​。

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